Volume Layer ■ 立体のレイヤー

モノは通常、単一ではない用途をもっている。モノはいくつもの用途のレイヤー(階層)の重ねあわせによってできていると考えると、ひとつひとつの用途はそれぞれがひとつのレイヤーに分解することができる。そして、何を要素として捉えるかによってレイヤーの分けかたは異なる。

プランニングの方法のひとつとして、ここでは空間の用途をひとつの要素として空間のレイヤーをつくり、それを重ね合わせることによって多元的スペースをつくることを考える。

A(赤)、B(緑)、C(青)の3つのスペースを考える。プランニングにおいて、それぞれのスペースの広さ・形状を決め、重ね合わせながら形を調整していく。
それぞれのスペースの関係から3つのスペースを重ね合わせながら配置する。
干渉する部分などを考慮しながら大きさや形状などを調整していく。ほかのスペースと重なり合うB(緑)は押し広げられるように横に延び、A(赤)はC(青)と完全に分離する。
各スペースの強さや重ね方などを変化させる。C(青)のスペースを弱くしてBと完全に混じるようにする。B(緑)は内部に対してあいまいになり全体をまとめる。A(赤)のスペースは外にも開き外部との境界をあいまいにする。

平面上でのプランニングはこのように進.めることができるが、建築の場合には扱うのは空間なので、高さを含めた3次元の立体で各スペースを考える。


高さをもつA(赤)、B(緑)、C(青)の3つのスペース


平面のときと同じように3つのスペースを考え、それぞれを適切に配置していく。つながりのあるスペース同士は、その度合いに応じて重ね合わせていく。


各スペースの関係から配置された3つのスペース


それぞれのスペースの強さを調整する。ここではC(青)のスペースを弱くして、B(緑)を強めている。


強度を調整された各スペース

ここまでは平面の場合と同じである。ここで、各スペースの向きや高さ方向の位置を変化させる。スペースは立体のボリュームであり、ほかのスペースの関係性を満たしている限り、各スペースの位置は3次元的に自由である。B(緑)は上向きに起こされ、A(赤)は持ち上げられる。


横から見る 左側面(左)と正面(右)

単に平面的に並べたものは落ち着いてはいるが、動きや緊張がない。動きや緊張は期待感や高揚感につなげることができる。バランスは重要である。単に奇をてらうと落ち着かない不安定な形状になるからである。


向きや高さ方向の位置を変化させたスペース

重なり合う部分は平面の場合にくらべ、より複雑になり変化に富む。重なり合う部分もまた立体のボリュームだから、重なり合うスペースのそれぞれの強さが合わさった空間が発生する。A×Bの空間、B×Cの空間、C×Aの空間、そして3つのスペースが重なり合うA×B×Cの空間のそれぞれがそれとわかることによって、各スペースつながりと拡がりを3次元的に感じることができる。

たがいに重なり合う3つのボリューム。重なった部分が複雑にからみあう。
ムービーファイルを開きます VRMLでモデルを動かすことができます
※ムービーファイルをご覧になるにはQuickTimeプラグインが必要です >Download
※VRMLをご覧になるにはVRMLプラグインが必要です >Download


それぞれのスペースは、内部からも外部からもひとつひとつがそれと認識できるようシンプルである必要がある。直方体や立方体、球体などである。そういったプリミティブな形態を、強さや重ね合わせの度合いをうまく調整することにより、明快でムダのない、しかし深みのある空間をつくることができる。